日本を取り巻く諸島の領土問題は、日本政府の不甲斐なさを尻目にますます混迷を深めてきた。
北朝鮮による延坪島への砲撃は許しがたい行為だが、これも領土問題(領有権)が根底にある。
地図を広げて日本を取り巻く周辺列島の位置関係を見てみると、第二次世界大戦の中の太平洋戦争(大東亜戦争とも言うが)の影がどす黒く渦巻いているのが窺い知れる。
先ず、北に眼を向ければ、アラスカ半島から伸びているアリューシャン列島がある。 太平洋戦争勃発時、大本営アメリカは北からも攻めてくるであろうと想定し北の守りを固めるために、アッツ島キスカ島に精鋭部隊を派遣して占領し守りを固めていたが、日本からの補給が止まってしまって弱体化した日本軍に対し昭和20年の3月頃から米軍の攻撃が始まり、アッツ島は玉砕の道を選ばざるを得なかった。 だが、キスカ島の兵士は全員濃霧の中での奇跡的な脱出に成功。アメリカ軍に地団太を踏ませた。
現在、このアッツ島以東アラスカ半島までの全アリューシャン列島は米国領である。
このアリューシャン列島を断ち切るようにロシア領カムチャツカ半島があり、その最南端から北海道に向けて千島列島(ロシア名:クリル列島)が連なっている。
日本版地図帳では、択捉海峡以南は日本領土となっているが、北方4島の日本人はすべて北海道に強制移住させられているので、実質的に千島列島は全島ロシアの統制下にあるのは周知の通りである。
戦後、日本政府は北方4島の領有権を主張し何十年も掛けてロシアと交渉し続け、ようやくいい方向に流れが出来たように見えてきたが、民主党政権になった途端、ロシアは明確に自国領土であると主張し始めただけでなく、プーチンのマリオネット的存在のメドベージェフ大統領に日本国民を逆なでするようなパフォーマンスを披露されてしまった。
南に眼を転じてみる。
米軍の猛攻撃を受けて島が変形したとまで言われる激戦地、硫黄島は米軍に占領されたが、この島を含む小笠原諸島は日本領土のままである。沖の鳥島大東諸島も然り。そして、鹿児島から連なる大隈諸島、薩南諸島琉球諸島のうち、沖縄はアメリカから返還されて日本の領土に戻り、与那国島までの先島諸島も日本領土であるが、そのすぐ上に位置する尖閣諸島を中国は自国領土と主張して此度の衝突事件を起こしている。
しかし、地図を見れば一目瞭然、この位置にある尖閣諸島は中国本土からは遥か離れていて、矢島諸島のすぐ上にある。だれがどう見ても中国の主張は「ごね」としか言いようがない。
中国が尖閣諸島を中国領土にしようとする目的は、矢島諸島、沖縄諸島薩南諸島だけではなく、屋久島を含む大隈諸島も中国領土にする策謀があると見做さなければなるまい。
では次に、日本海に眼を移してみよう。 韓国では今、日本海を朝鮮海に改名する動きが活発だ。島根県境港の北に隠岐諸島があり、その北西部の韓国と日本の中間点に竹島がある。 この島も日本が一番先に日本固有の領土である事を国際法に基づいて公的に示し「先占」権を持つが、韓国は1954年に武力占拠してからずっと実効支配している。
その韓国と北朝鮮朝鮮戦争終結時に決められた南北国境線の内、海上部分で北と南の主張が食い違っていたが為の此度の攻撃となったようだが、地図で見る限りこの海域の国境線は微妙な引きかたをされている。 大延坪島、大青島、白令羽島などは、北朝鮮に取っては北海道に隣接する歯舞色丹のような状況にある。
なるほど、この位置の島であれば、北から南に逃れて来るのに好都合の島となる。それだけに北朝鮮にしてみれば海岸線の監視には他所の数倍の警戒を要するであろうと想定できる。
此度の砲撃はどんな意図からなされたのかは今の所明白ではないが、北朝鮮の苛立ちのようなものが垣間見えてくると同時に、韓国の防衛体制は日本を遥かに凌ぐものであることも伺い知れる。
太平洋戦争、朝鮮戦争、その前の日露戦争日清戦争と、戦争の度に領土問題が発生する。 古今東西、戦争とは一握りの権力者の欲のぶつかり合いだ、とつくずく感ずる。