民主党の若手議員、浅尾慶一郎氏(参議院神奈川区)がめきめきと頭角を現している。昨日の守屋元防衛事務次官に対する証人喚問で、今迄質問に立った他の議員全員がどうやっても口を割らすことが出来なかった2人の元防衛大臣の名を見事に聞きだした事でも彼の辣腕ぶりが伺える。 これからの更なる活躍が楽しみな議員だ。 

その浅尾慶一郎氏の秘書を6年間も勤めた男が1年ほど前にダイヤモンド業界に参入してきた。まさか誰かにだまされた訳ではないだろうが、正義感の塊のような彼は、若くてハンサムで明るくてアクティブでタフであるだけではなく、極めて礼節をわきまえた今時珍しいナイスガイである。

発足以来13年も続いている「友朋ソサエテイ」という宝飾業界の集いがある。昨晩その集いがあったが、司会進行役にそのナイスガイが選任された。この集いは、業界の慣例をことごとく打ち破った業界では極めて珍しい集いだ。平たく言えば、業界刷新を心に抱いている人たちで、会社の肩書き、学歴、国籍、宗教、男女、の垣根を一切取り払い、年齢だけは若手中心のパーソナルステータスを最重視した会員の集いだ。もっとも会員と言っても、会則は特になく、入退会は自由、入会金制度もなく、会費はパーティー開催に要する実費のみの全くのボランティアの集いである。そのせいか述べ会員は約900名にも上る。

彼の司会進行は、初めてとは到底思えない程の出来栄えで、出席者の好評を博したが、国会での浅尾氏同様、今後の友朋ソサエテイでの活躍を大いに期待する所だ。

此度のメインは宝飾業界の重鎮であるM氏の講演だったが、彼の真骨頂であるデータを駆使したジュエリー業界の景気動向の解説にはまさに脱帽してしまった。 よくまあ、根気よくここまで調べ上げて纏めたものだ、とほとほと感心せざるを得ない。

しかも、データに潜む裏は何かを視聴者に考えさせるようにうまく誘導してから逆に視聴者に質問してくる技法には目を見張らざるを得ない。 彼は、自分で調査したデータを分析しながらどこか心の隅で、実態と何かが違う、と感じていたのでたまたま出席していたその道の大家に順次逆質問したのだろう。

夫々の大家が素晴らしい分析と解説をしてくれたので、皆さん十分納得されたと思うが、岡目八目的気性の私は、この一連のデーターを拝見して更に別の思いを再認識することができた。

1)日本の消費者の多くは名の通っていない日本のメーカーが作ったジュエリーに対し魅力を感じなくなっている。日本製品の優秀さが全世界で認められている昨今、ひとり宝飾品だけが蚊帳の外に置かれているが、その原因はメーカーの物作りに対する姿勢にある。

2)日本の多くのメーカーは先ずコストを一番先に考える。ここで既にメーカーとして3流に成り下がってしまっている。 価格で勝負しようとしても賃金が安いインドや中国製品には絶対に適わないし、しかもインドの有力メーカーは高い報酬を払ってイタリアやドイツから熟練工を招聘してデザイン面でも技術面でもどんどんレベルアップさせている。

3)日本のメーカーの多くは、コスト軽減の主眼を低賃金に置き、韓国から未熟者の労働者を招聘し半ば軟禁状態にして働かせているが、彼らがそれに耐えて頑張っているのは、彼らの目的が将来自国に帰って自立する事にあり、その為の修行と位置づけているからに他ならない。

4)従って、彼らが熟練工になって素晴らしい製品を作ることが出来るようになれば韓国に帰ってしまうので、いい技術者を失った工場はいい製品の作成が出来なくなる。そして、当然ながら韓国は日本を凌ぐ優良品を安いコストで製造することになる。でも、今の所韓国は欧米市場に目を向けていて日本市場を脅かすまでには至っていない。師匠にたいする敬意の表れであろうか。

5)日本のメーカーが、金やプラチナ価格の急騰の流れの中で、今度は地金の量を軽減した貧弱な宝飾品を消費者に提供しようとしてるが、それも限界に来ているとのF氏からの解説を聞いて、その発想の稚拙さに呆れてしまった。 消費者を全く理解していない発想だ。

6)消費者好みのいい製品を国内で作れなくなれば、あとは輸入に頼るしかない。いまだ関税が5.6%〜5.2%掛かるが、それを考慮しても、国内製の粗悪品を扱うよりは救われる。 ジュエリーの輸入が増えた裏側には、そのような事情があるので、ブランド品の輸入が増えたのが原因ばかりとは言えない。

7)製品輸入が多くなれば、素材としてのスターサイズやメレーサイズのダイヤは不要になる。 輸入のかなりの部分を占めていた小粒のダイヤモンドが不要になれば当然ながら輸入量は減ることになる。これからもこの傾向は続くであろう。

8)しかし、それよりも何よりも、今、日本のダイヤ業界は世界から馬鹿にされている。ユダヤ人も、インド人も、中国人(香港)も、なめてかかってきている。 そんな流れの中で、ダイヤの輸入業者は海外での買いつけにビビッている。この傾向も暫く続くだろう。

9)真珠業界はどうであろう。日本の養殖真珠ががたがたになった原因は海の汚染だけではない。最大の原因は、技術者の海外流出である。なぜ技術者が海外に流出したかと言えば、単純明快、日本の真珠養殖業者は優秀な技術者を冷遇していたからだ。そこに彼らの技術を高く評価し2倍、3倍の報酬を約束してくれれば、誰でも小踊りながら受諾して海外で思い切り働きたくなるのが人情と言うものだ。その結果、養殖技術は日本の技術者によって海外で広まり、今の結果を生んだのだ。経営者が自分の目先の利潤だけに目を向けて、最も大切にしなければならない優秀な技術者をないがしろにした報いである。だが、真珠業界がかろうじて救われているのは、日本の優れた真珠の加工技術がまだ海外に流出していない点だ。その為、海外で養殖された真珠はそのまま市場に流れたら品質的にかなり低く評価されてしまう。海外のバイヤーは美しい日本の真珠を見慣れている。日本の輸出入業者は、加工の不十分な商品を輸入し、それを見事な商品に大変身させて欧米に輸出する。会場で歓談した真珠業界の大御所に、「多分真珠輸出入業者は元気がいいのではないですか?」と伺った所、「全くその通りです」と賛同してくれた。

10)データに現すことが不可能なのが、年間1100万人を超す旅行者のショッピング内容だが、果たしてそのうち何人がどんな宝飾品をどれだけ海外で買ってくるか知りたい所である。私の想定するところ、例えば、バンコクあたりで騙されてとんでもない粗悪品を高値で買わされた人なども含めると凄い数字がでてくるのではないかと思っている。

11)日本で古臭いデザインにいまだしがみついて販売に苦戦している宝飾業者を尻目に、多くの旅行者は海外で素敵なジュエリーを手にして帰国してきているのではないだろうか。成田空港の到着ロビーで1000人くらいにアンケートを取ったら、意外な数字が現れるかもしれない。正直に話してくれたらの話だが。

12)金、プラチナ地金の価格推移に関しては、私は5〜6年ほど前に、5年以内に史上最高値をつけるだろう言いふらしていたが、5年たった今も円ベースでまだ最高値に遠く及んでいない。円高のせいもあるが、今後まだ上昇は続くだろう。罫線判断からも向こう数年以内には最高値を更新すると思う。過去の最高値は6000円/gを超えていた。データの罫線では間違いなくその頂点に到達しようと向かっているように見える。

13)かつてダイヤ買い付けの為に何度も南アを訪ねていたが、その度に目にする光景が巨大な「ぼた山」群だ。その「ぼた山」には特徴があって、何の鉱山かはその色で分る。不気味なのがプラチナ鉱山の「ぼた山」だ。原野を車で走っていると、突然ねずみ色の巨大な「ぼた山」が出現する。その色こそそのぼた山がプラチナ鉱山である証だ。ある方にその話をしたら、「プラチナ鉱山は宇宙の巨大な隕石が地球にぶつかって地中にもぐりこんだもので、掘りつくしたらお仕舞いの金属なんですよ」と説明してくれたが、果たして本当かどうか、良くわからない。でも、あの色を見ているとなんとなく信じたくなる。

長くなってしまったが、今日はこれでおしまい。