昨日北海道で最高気温が26.4度まで上昇したとの事。東京は16度一寸だったので10度もの差が生じたことになる。これは明らかに異常だ。生き物はみんな戸惑っているに違いない。
桜前線は今山形県あたりを北上中と思われるが、例年より10日ほど早いのではないだろうか。5年ほど前に秋田県角館市の桜を観に行った時は5月の連休だったが、満開だった武家屋敷の枝垂桜や川沿いのソメイヨシノのトンネルには心底から感動した覚えがある。
毎年、ゴールデンウイークには実家に帰って母と過ごすのだが、その頃は田畑の雪がやっと消えて野山の生き物たちも一斉に活動し始める時期でもある。人間も例外ではない。田んぼに肥料を撒いていよいよ稲作の準備が始まる。
雪の重みでのしイカの如く平べったくなっている地面に先ず肥料を撒いていく。それが終わったら次は田お越し(耕し)、そして水を入れていく。たっぷりと水が入ったら「代かき(土と水をかき混ぜて漉し餡状態にする)作業」で一応田植えの準備が整う。この漉し餡状態にする理由は、田植えをスムーズに行う目的の外に、水が地下に浸透するのを防ぐという重要な目的がある。
水がはられても全く静寂を保っていた田んぼは、代かきが始まったその晩からカエルの大合唱の会場となる。何百何千のカエルがげろげろげこげこげーげーと啼き続け、それはそれは喧騒たるものだ。何処にこれほどの数のカエルが潜んでいたのだろうと、驚きと大自然の不思議さを実感するひと時だ。そして明け方にはほんのわずかに、げろ、げろ、としか聞こえてこなくなる。朝方まで啼いているカエルはメスに振られた哀れなオスガエルだ。これが幾晩も繰り返される。
満々と水を湛えた田んぼのすれすれを色々な虫が飛び交う。それを追って鳥が飛び交う。山に目を移せば、残雪が白い。そして山の麓では山菜が目を出し始める。ふきのとう、タラの目、こしあぶら、アケビの芽、わらび、こごみ(くさそてつ)、ぜんまい、うるい、などなど、どれもが春の息吹を堪能させる味だ。
関東近県でも時期は早いけど、似た様な経験が出来るようだが、いまその里山の環境がじわじわと破壊されているらしい。開発の波がどんどん押し寄せてきているからだ。農業の担い手が高齢化し農業を続けたくても後継者がいない、という深刻な事態が開発を助長しているきらいもある。
田畑を持っている限り作物は作り続けられるが、売ってしまったらその時に入手した金を使い切った時点で手許には何も残らなくなる。それでも手放す農家が後を絶たないのは、農業を続ければ続けるほど赤字が重んでしまう実態があるからだ。
所が日本の農業政策の稚拙さは目を覆うほどだ。机で勉強ばかりして育った、農業を全く知らない官僚が紙面の数字だけを基準にして重要政策をすべて決めてしまうのだから、実態に全くそぐわないのは当たり前だ。
そんな中、20日(日)の日経に日本の農家にとっての朗報が掲載された。農家にとっての朗報は農家が丹精こめて作ったものをただひたすら消費するだけの人間にとっては悲報となる。
「激化する食料争奪戦、相場上昇に拍車・途上国で死者も」と言うタイトルで世界の食料生産国の最近の動きを報じているが、そのレポートによると、世界の主要食料生産国が自国の消費量を確保するために「輸出税」を導入し始めたとの事。ロシアを例に取れば07年11月に大麦30%、小麦10%の輸出税を導入し、わずか2ヵ月後の08年1月には小麦の輸出税を40%に引き上げている。中国も今年1月に米、小麦、とうもろこし、大豆などに5〜25%の輸出税導入している。ベトナムは米の大量輸出国だが、今年の6月まで米の輸出を停止している。インドも然り。現在小麦と米は輸出禁止品目だ。異常に上昇している相場を冷やす為の措置との事だが、食料自給率38%の日本の打撃は大きい。自給率を高める必要が急務となっているが、政府は外を眺めているばかりだ。
日本の農業が価格上昇により黒字化したら今の流れが変化すると思う。若者も食べ物を作る喜びを感じるようになるだろうし、丹精こめて作ったものを消費者に美味しく食べてもらう喜びも味わえるだろう。
日本の多くの若者に、日本の美しい原風景を破戒から守る役割を担って欲しいものだ。