次期アメリカ大統領にバラク・オバマ氏が選ばれた。 12万5千人の支持者を前に行ったヴィクトリースピーチをテレビで聴いたが、感動的で美しい言葉の裏に今後歩むアメリカの前途が極めて多難である事が示唆されていたように感じられた。
8年前にジョージ・ブッシュが大統領に選ばれたとき、私はアメリカの前途に不気味な陰りを感じた。 なぜなら、私には、歴代のアメリカ大統領の中でも最低レベルの人物としか映らなかったからで、アメリカの民衆はもうこの程度の人間をトップとして選べる知能しか持ち合わせないのか、と思ったからである。 もし、民主党のゴア氏が勝っていたらアメリカは、日本は、イラクは、アフガニスタンは、ロシアは、中国は、そして世界はどう変わっていただろうか。 歴史に「たら、れば」はご法度だが、石油メジャーのマリオネットであるテキサス男の彼が大統領になったが故に9・11事件が発生し、その後のテロとの激しい戦いが展開されたと思っている人は多いはずである。
それだけではない。 彼は在任期間の8年間に、クリントン政権が築いた富めるアメリカをすってんてんの貧乏国に凋落させてしまった。 そして、そんな台所事情を偽装して相変わらずの繁栄振りを世界に見せる為に詐欺同然の経済運営を打ち立ててきた。
サブプライムローン問題は、アメリカの民衆が如何に危機意識に乏しいかを如実に証明した出来事でもあるが、同時に米政府がその自己責任負担を世界の金融機関にも被せてやろうと画策して紙くずを押し付けた為に、今回の未曾有の金融危機を引き起こさせた。
しかし、これに懲りた世界はもうアメリカの言うことを素直に聞かなくなるだろう。 ロシアも、EU諸国も、中国も、これからおおっぴらにアメリカに覇権の座を明け渡すよう迫ってくるに違いない。 弱体化してしまったアメリカに、昔お世話になったからと義理立てして今後も忠誠心を貫こうとするのはせいぜい日本くらいなものだろうか。
それを知ってか知らずか、オバマ氏の目はアジアではもう既に中国に向けられ、日本の方を向いていないようだ。 それは当然の事で、彼は今後、大国であるロシアや中国を相手に覇権争いをしなければならない運命にあり、平和ボケの日本などかまっていられないからだ。
スピーチでは、「我々は、民主党でも共和党でもない、白人でも黒人でも有色人種でもない、金持ちでも貧乏でもない、男も女も、年寄りも若者もみんながアメリカ合衆国民なのだ」と国民の一致団結を呼びかけていたが、正しくこの国難を皆で乗り切ろうという呼びかけにも聞こえる。
マスコミでは殆ど取り上げられていないが、将来の覇権争いで私が一番注目している国は、他ならぬ「インド」である。中国に「漁夫の利」と言う諺があるが、インドは正しく漁夫にならんとしているように思えてならない。 もともとインド人は争いごとが大嫌いな民族だ。 だから真っ向勝負する気などさらさらない。 だが、目的を達せんとするネチッコさは天下一品だ。
将来、ロシアも、中国もEUもアメリカとの覇権争いでへとへとに疲れた所で、それまで目立たずジッと蓄えてきた財力を武器にして一気に覇者になる可能性大である。 勿論、その頃にはルピーがドルやルーブル、ユーロやポンド、元や日本円よりもずっと価値のある通貨に変貌している事だろう。
日本がインドを軽視したら日本の将来にとって重大な過失につながると断言できる。 少なくともダイヤモンド業界人や、IT産業でインド人技術者の卓越した能力を肌で感じている人達ならば全く同意見だろう。
オバマ氏がその辺りをどの程度把握しているかがアメリカの将来を左右する重要なキーポイントとなるだろう。
日本の民主党は米国で大統領選のみならず、地方選挙でも民主党が大勝したことで、日本でもそのお流れをお裾分けしてもらい自民党に取って替わって日本の政治を担おうと意気込んでいるとようだ。 だが先日、まだ野党の立場でしかない小沢一郎代表が、一寸体調が思わしくないからと、経済成長著しい大国インドから来日していたシン首相との会談を当日になってドタキャンしている大愚挙を見逃す訳には行かない。
鳩山幹事長が、「とにかく挨拶だけでも・・・」と具申したのを無視して「疲れ」を理由に会談を蹴ったそうだ。 ワガママも極まれりで、その国際感覚の無さには呆れると同時に冷笑するしかない。 そんな傲慢な人間が日本の首相になったら日本は世界から相手にされなくなる。 本人は最初から首相になるつもりなど毛頭ないからこんな愚挙に出たのだろうが、シン首相の心境は如何ばかりであったろうか。 インド人は表面では常に冷静だ。 だが心の奥では何を考えているかが計り知れない民族だ。 その後、シン首相は中国では大歓迎されたそうだ。 小沢のドタキャンも話題に上ったかも知れない。 こんな人間を代表にして意気込んでいる日本の民主党アメリカの民主党をとても比べる気にはなれない。