米国第44代大統領オバマ氏の就任演説を聴いた。 そしてその全文日本語訳も読んだ。
見事だな〜とつくづく思う。
“I have a dream”とスピーチしたキング牧師の夢が現実となった。
威張る術しか心得ていない2世3世のお坊ちゃん政治家に比べ、心身共に苦労を重ねてのし上がった政治家は人の心を捉える術に長けている。 
金や物を与えて味方にした人間は真の味方とは言えないし、どんなに金持ちでも与えるのに限度がある。 それに引き換え、言葉は無限だ。 金言は世界を駆け巡った。
オバマ新大統領の演説の中でも私が特に感銘したのが以下の部分だった。
“For we know that our patchwork heritage is a strength, not a weakness. We are a nation of Christians and Muslims, Jews and Hindus, and non-believers.”
(我々のパッチワークヘリテージは丈夫だということを我々は知っている、弱くなど無い。 我々はキリスト教徒、モスレム、ユダヤ、ヒンディ、そして無信徒の国だ)
この「パッチワークヘリテージ」にピタリ当てはまる適切且つ簡潔な日本語訳など私の頭では到底浮かばないが、単純に訳せば「つぎはぎ細工の伝統工芸品」となるこの言葉の持つ意味は、アメリカの独立前から今日に至るまで幾多の国から幾種の民族がこの国に集まり団結して営々と築きあげてきた大切なもの、と解釈できる。 そんな壮大で深淵な歴史的重みを、このたった二つの英単語で絶妙に言い表してしまうオバマ新大統領の言葉の魔術に、改めて並外れた政治パワーを感じてしまった。
平和時代にヒーローが現れることは有り得ないが、今は正に地球規模の危急存亡の時。 彼がそれを救う為に現れた我々地球人全体のヒーローであって欲しいと願わずにはいられない。
さてその頃の日本は参議院予算委員会で審議の真っ最中。 
議員連が、百年に一度の危機と何度も何度も騒ぎ立ているかたわら、予算審議に関係ないことを長々と喋りまくり、更には首相に対し漢字熟語が12行書かれたボードを示して、「貴方が文芸春秋に寄せた手記に出てきた漢字だが、貴方の漢字力からして、誰か(他の人)が書いたとしか思えない」とまくし立てている男がいた。 首相にも責められるべき負い目があるとはいえ、重要な国会審議中に、しかも全国ネットでTV中継しているさ中にである。 彼の言葉には金言のかけらも無い。 言葉は使う人によってかくも大きな価値の違いを生じるといういい例だ。
彼は以前からいつも恫喝的質疑を繰り返して物議をかもし出す男だが、それにしてもあまりの下品さに見ていて胸糞が悪くなってしまった。 おそらく多くの視聴者も同様に気分を害した事と思う。 こんな男が、だめな自民党から政権を奪取して国民の為になる政治をしようとしている民主党の副代表と言うのだから、日本の政治の貧困さを心底から嘆かずにはいられない。
頼むから、もうこうした今も先も読めないロートル政治家は、自民党であれ、民主党であれ、他の政党であれ、全員国会議員をさっさと辞めて郷里に帰り、好々爺になって庭で盆栽いじりでもしていてもらいたい。 
その点、流石はアメリカ、大統領の任務を終えたら誰もがヘリコプターでホワイトハウスから颯爽と郷里に帰りのんびりと余生を送る。 潔(いさぎよ)い。
なんと言う違いだろうか。