昨日のオバマ大統領の議会演説をどう扱っているか確かめようと日経朝刊と産経を読んだ。
産経は、就任演説の時ほどきめ細かく報じていなかったが、日経はより突っ込んだ詳細文と識者の評論を載せていたが、有り難かったのは“NIKKEI NET”で英文と日本語翻訳文全文を読むことが出来たことだ。
TVの生中継の時は、オバマ大統領の声に通訳のより大きくてせわしない声が常に重なっていて彼の意思が充分に伝わってこなかったので半ばいらいらしながら視聴していたが、お陰で彼の声をイメージしながら全文を読むことが出来た。
もし興味があったらPCで簡単に検索できるのでお試しあれ。 非常に英語(米語)の勉強になる。
何故オリジナルにこだわるかと問われれば返答に窮するが、敢えて言えば、他人の解釈でなく飽くまでも自己判断で彼の人となりを感じたかったからだ。
もっと言い訳すれば、通訳者がどんな人生経験を持つ人物か皆目解らないのにその人が訳した言葉を単純に信じたくない、と言った気持ちが頭の隅にあるからだ。
奇しくも今日の産経の文化覧にTV番組の「アタック25」の司会でも有名な児玉清氏の記事が掲載されていたが、それによると彼は物心ついた頃から読書を1日も欠かさず、蔵書は1万冊を超えるとの事。 その中でも英米の小説が特にお気に入りで、翻訳ではなく原書で読まれるそうだ。
彼はその理由を「楽しく読みこなすコツは、辞書を引かないこと。日本語訳がはっきりしなくても、言葉のニュアンスから類推して、情景を思い浮かべる。想像力をふくらませる。外国語の本だと、より頭を使うでしょう。面白くて仕方がない」と説明している。
本当にその通りだと思う。 日本の落語を聞いて日本人と同じくらいに理解して笑える外人がいるとしたら、その人は日本の歴史や庶民の暮らしや世相の事件などにうんと詳しい特別な人だろうが、其処まで詳しくなくてもある程度の日本文化の知識を持っている外人なら結構楽しく笑えるだろう。
NIKKEI NETに記載されている英文を読んだ後に日本語訳を読んで、自分の解釈と結構違うな〜と感じた箇所があちこちにあるのに気がつく。 どっちがオバマ氏の心情に近いのかは別として、非常に勉強させられた箇所もある。 訳者も、オバマ大統領の心情を如何にして忠実に日本語で表現しようかと苦心された形跡が随所に見える。
そんな中の一つが“quitters”の日本語訳だ。 前文も重要な意味を持つので一寸長文になるがこの単語に行き着くまでを以下に記したい。
原文;
“And I think about Ty'Sheoma Bethea, the young girl from that school I visited in Dillon, South Carolina - a place where the ceilings leak, the paint peels off the walls, and they have to stop teaching six times a day becasue the train barrels by their classroom. She has been told that her school is hopeless, but the other day after class she went to the public library and typed up a letter to the people sitting in this room. She even asked her principal for the money to buy a stamp. The letter asks us for help, and says, "We are just students trying to become lawyers, doctors, congressmen like yourself and one day president, so we can make a change to not just the state of South Carolina but also the world. We are not quitters."
日経訳;
そして私はかつて訪れたサウスカロライナ州ディロンの学校に通う少女、ティシェーマ・ベシアさんを思う。同校は天井から水が漏れ、壁のペンキははがれ落ち、電車が猛スピードで教室の横を通るため、1日6回も授業を中断しなくてはならない。
人々は彼女に学校は救いようがないと言うが、ある日の放課後、彼女は公共図書館に行き、この議事堂に座る人々にタイプで手紙を打った。手紙を送る切手代は校長先生に頼みに行った。手紙は我々に支援を求め、こう書いてある。「私たちは弁護士や医者、あなた方のような議員、そしていつの日か大統領になろうとしている学生です。私たちはサウスカロライナ州だけでなく、世界を変革することができるのです。我々は簡単にあきらめる人間ではありません
この演説のとき、TVカメラは、傍聴席最前列で聞いていたオバマ大統領夫人、ファーストレディーをアップで捉え、彼女は右側に立ち上がってはにかんでいる少女を優しく抱きしめていたので、その少女が手紙を出した本人と判ったが、目がキラキラと光っていた黒人の少女だった。
訳者がTV中継で少女を見たかどうかは知らないが、訳すのに苦労した単語の一つではなかったかと推測している。 でも、私にはどうしてもすんなりと受け入れられない訳語だ。
Quittersの意味がとても深く感じられるからだ。 だから敢えて訳すのはやめた。