22日の日本経済新聞23面に「暮らし考房」がカラー写真入りで大きく紹介された。
財団法人都市農山漁村交流活性化機構の森業・山業事務局がスポンサーとなって、日本経済新聞社広告局が企画制作した、森林資源を利用した新ビジネスの一環として紹介されている。
「暮らし考房」は栗田和則・キエ子夫妻、そして長男の和昭・千代美夫妻の4名で運営されているが、キエ子夫人は草木染の師匠でもあり、和昭氏はチェーンソーアーティストでもある。
「暮らし考房」のある山形県金山町杉沢は現在わずか13戸の集落であるが、この山深い村で暮らす人々はみんな生き生きとしている。それもそのはずで、この村は「共生のむら」と銘打って恵まれた大自然を最大限活用して暮らすべく村人が一丸となって創意工夫を続けている。村人のうち7人が「山里案内人」となり村の訪問者に山里暮らしの楽しさを体験させてくれるので都会の人は誰もが感激してリピーターになっているという。
また、毎年開催される、在野の哲学者内山節氏を囲んだ「里山フォーラム」塾には日本全国から熟生が駆けつけて、自然と人間とのつながりや山村で暮らす価値感などを熱く語り合うそうだ。
2年ほど前に「十三戸のムラ輝く」という本が出版されたが、栗田夫妻の美しい文章には誰しもが感動するだろう。是非一読をお勧めしたい。
私が初めて「暮らし考房」を訪れたのは今から3年前の夏の事だった。車で13号線を北上し中田という集落に入り、そこから右に曲がって2〜3Km走ると右に左にと家屋が点在している。しかし目的の家が見つからないまま道が行き止まりになってしまった。仕方なくUターンしてまたゆっくり走りながら探したがやはり見つけることが出来ない。村人は何処にも見当たらない。携帯は圏外を表示していて使い物にならない。その日は訪ねるのを諦める事にした。
その夜電話で再確認した所、どうやら私がUターンした場所が目的地だったようだ。余りにも奥深い場所に来てしまい心細くなっていた私には車を降りて周囲を再確認する勇気がなかったのが災いした。翌日改めて訪問し無事に栗田氏に会い、超繁忙の彼と2時間もの長時間熱く語り合うことが出来た。
素敵な男である。決して自分を飾らない。言葉も態度も自然そのものである。彼と話していればいるほど彼が大きく見えてくるから不思議である。暑い日だったが、冷たい湧水で冷やしたメープルサップ「きさらぎ楓露(ふうろ)」をご馳走になった時は思わず唸ってしまった。この商品は彼が考案した世界で唯一のメープル樹液飲料水だった。
「暮らし考房」の「ふるさと味倶楽部」の会員になっていると、毎年季節ごとに貴重な品々を送ってもらえる。野菜あり、山菜あり、きのこあり、メープル商品あり、合鴨農法の米あり、どれも栗田夫妻の心のこもった珍品ばかりだ。ただ、難点は会員数だ。確か15名が限界と聞いている。
栗田夫妻はその活動ぶりを評価され、町から、県から、国から何度も表彰されている。講演も全国で頻繁に行っているし、TVやラジオへの出演も多いし、業界紙も地方紙も全国紙も幾度となく彼らの活動振りを紹介している。此度の新聞掲載その一環であろうが、楓の樹液を採取する彼の姿は正しく森の仙人のようだ。
中学時代、私の左に並んで仲良く学んだ彼が、杉沢から片道8キロ近くもある道を毎日通学していた事を知り、彼が勉強に打ち込む意欲が尋常ではなかった事を今頃になって痛感している。