人間は一度いい思いを味わうと、それが忘れられず再び味わおうとする。 つまり「欲」が出る。
「欲」と言う字は本来「慾」と書く。 「心」が付くと納得の漢字になるのに今は殆ど使われない。
3月31日、東京は曇天だったが、年度最終日だから人々は多忙で、しかも平日だから多分混まないだろうと、昼前に「ルーブル展」を鑑賞しようと出かけたが、上野駅公園口に着いて驚いた。
改札口左脇の展示会鑑賞券売り場には50人ほどが列を作っていたが、改札を出たらすごい人の群れだ。 其処から歩いて1分ほど先にある「ルーブル展」開催中の西洋美術館に着いてまたまた驚いた。 なんと入場制限中。 入場まで40分待ちとの事。 とても耐えられない。 諦めついでに、係員に「平日でもこうなの?」と聞いたら、「今日は混んでるほうですが、土日ほどではありません。」
それではと、開催初日の「国宝阿修羅展」に行くことにした。 道すがら、科学博物館で開催中の「大恐竜展」の前を通ったが、ここも長蛇の列。 春休み中とあって、親子ずれが200m近くは並んでいたろうか、入場までに50分待ちの看板が出ていた。
やっと東京国立博物館前の入場券売り場迄来て見たら、ここにも「入場まで20分待ち」看板が。 しかし、前方の平成館の入り口付近に並んでいる人数はそれほど多くなさそうに見えたので、取り敢えず券を購入して中に入って並ぶことにした。 
20分も待たずに入場することが出来たが、中に入ってまたまたびっくり。 兎に角、館内は人で溢れかえっている。 展示場内もびっしり人で埋まっている。 目玉の阿修羅像の展示室はまるでパンダを見るための行列を彷彿させるように、前後左右からぎゅうぎゅう押されて時計回りにゆっくりと動きながらの鑑賞だ。 とてもじっくりと鑑賞できるような状態ではない。 これには参ってしまった。 でも、八部衆十大弟子立像、四天王立像や高さ8メートルもありそうな薬王菩薩立像、薬上菩薩立像など、素晴らしい作品を鑑賞できたことで溜飲を下げることが出来た。
人混みは館内の阿修羅関係特設売場でも同じ。 商品を手にしたレジ待ちの人でごったがえしている。 人混みはもうこりごりと、早々に退散した。
所が、次は桜を観賞しようと桜並木通りに足を運んでみてうんざり。 道路はやっと肩がぶつからない程度の間隔でびっしりと人が歩いている。両脇の桜の木の下には青いシーツがびっしりと敷かれている。 既に顔を真っ赤にして騒いでいる若者集団があちこちにいる。
何度でもマスコミ連中に問い正したい。 本当に今、日本は大不況なのか?と。 この実態をどう説明できるのか?と。
昨年、リーマンブラザーズショックで人々は急遽財布の紐を引き締めた。 しかし、我慢はそう長く続けられるものではない。 別に金は無い訳ではないので、使いたい気持ちがむずむず湧いてくる。 食べ物にも着物にもまたぞろ買い意欲が湧いてくるのは「慾」が潜在する限り当然の成り行きだ。 ただ、使い方の問題だけだ。
TDLの入場者数は昨年2722万人と最高記録を更新したそうだ。 人々は楽しみたがっている。 遊びたがっている。 今日、株式市場は売買が活発に行われ、株価は昨日に続き急上昇した。
人々の「慾」が頭をもたげて来ている。 そんなことから、もう景気は底をついてこれからはじっくりと上昇していくのではないかと判断している。